スタジオジブリの場面写真 火垂るの墓が対象外な理由を考察

 9月から続いたスタジオジブリの場面写真、静止画の無償提供。映画の1シーン画像を無料で堂々と利用できるシリーズだ。毎月数作品ずつ新たに追加されてゆき12月でついに追加更新が最後となった。 
 トトロも魔女の宅急便も他にもたくさん、そしてほとんどの作品が50枚ずつ提供され、見た事がある作品については、場面写真を順番に見てゆきながらストーリー展開を思い出してその場で作品を最初から最後まで再度体感した気持ちになったりした。

以前のジブリの場面写真の記事はこちら↓

 自分自身、最近の作品はまだ観ていないもの多数あるが個人的には風の谷のナウシカやトトロ、もののけ姫あたりの場面写真がとても嬉しい。ただ、特に何かに利用する具体的な予定は今のところないが。。

 今月で勢ぞろいしたところで改めて作品全体を眺めて、やっぱり個人的に観ていない作品、「思い出のマーニー」とか「ゲド戦記」とか「海がきこえる」あたり興味を持ったものは観ていかないといけないなと思った。 そしてもうひとつ、ある不思議な事に気がついたのだ。

 ”火垂るの墓の場面写真がない”

 他の作品は全て揃っているにもかかわらず「火垂るの墓」のみ場面写真の無償提供がされていないのだ。 何度かジブリのホームページを確認したが、たしかに今月で場面写真の追加提供は終了となっている。つまりは”火垂るの墓の場面写真は提供しない”ということになる。

 

<考えられる2つの理由>
 容易に考えられる理由のひとつは権利的な問題。 この作品の原作は野坂昭如で自身の戦争の体験をもとにして1967年に描かれた短編小説だ。 この原作小説を出版していたのは新潮社、しかしスタジオジブリは徳間書店傘下の会社なので、火垂るの墓の映画上映当時も新潮社と徳間書店の合同企画であった(当時はとなりのトトロとの同時上映であったというのが今考えるとモノスゴイ)。 

 こういった経緯から火垂るの墓の作品中の場面の”画像”をスタジオジブリだけの判断で容易に無償開放する事が難しいのかもしれない。 スタジオジブリは2005年に徳間書店から分離・独立しているのでそんなに難しい問題ではない様にも思えるがしかし、実際に今年から始まったNetflixやHBO Max等で順次開始されたジブリ作品の定額制動画配信サービス(両方日本は対象外)でも、火垂るの墓のみ配信が実施されていない。
 こういった事情により今回の場面写真も火垂るの墓のみが対象外であるという可能性は否定できない。

 上記理由でおそらく間違いないと思う。がしかし、権利関係の問題だけとも限らない。もっと別の角度からも原因を考察してみた。 考えられるもうひとつの理由として個人的に思った事は以下だ。

 実際の使用場面を想定するとあまり積極的な薦め方ができない、という理由が考えられる。 「常識の範囲で」とはいえども、自由に場面写真を使えるとなると様々な状況利用が考えられ、作品のメッセージや雰囲気と当然全く違ったかたちや意図で使用される事も沢山あるだろう。

 監督の高畑勲は火垂るの墓を戦争映画ではなく心中物だと説明しているが、実際の戦争を描いた作品であるという点、最終的に主人公は二人とも亡くなってしまうという点でも切り取られた画像(場面写真)に乗っかる印象の強さはほかの作品より大きい。
 作品のメッセージ性や、原作やスタジオジブリの意図している方向と無償提供で実際に利用された画像の意図が乖離してくる事が一番困る作品なのかもしれない。(「風立ちぬ」も時代的に第二次世界大戦期の日本を描いているが戦闘のシーンは一切ない。)

 いつの時代でもどこかで戦争は起こっている。 二つ目の理由の可能性は低いと思うが火垂るの墓の場面写真がどんな状況でも使用できる日を待ち望んでいる。

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