‟もの”と‟生きもの”が交流する世界。-ひょうひょう-

ひょうひょう-ネルノダイスキ-

 漫画をそんなに読まないからこそ好きになれたのかもしれない

 以前、自分は漫画をそんなに読まないと話した。 全巻読破したのは片手で数えるほど。漫画って何巻にもわたって繋がってゆく話を読み続ける必要があったり、1巻から読み始めないといけなかったりする”めんどうさ”が邪魔をしていたのかもしれない。

 確かに小説なんかでも上下巻があったり、複数巻にわたって出版されているようなものもあるが。基本的に文字だらけの書籍は一冊でまとまって完結してくれているものが漫画に比べると圧倒的に多いのは事実。

 しかし、漫画にも1巻完結の読み切りの漫画もたくさんあるし、サザエさんや笑ゥせぇるすまんのように、どこからでも読むことが可能な漫画もある。

 この「ひょうひょう」はまさにどこからでも読める短い話がたくさん詰め込まれた1冊だ。 実はこういった短編集のような漫画(なにか専門的な言い方があるかもしれないが、わからいのでそのままこう表現する。)は他にも「伊藤潤二自選傑作集」を持っている。ホラー漫画の短編集だ。

 どこからでも読めるし話が続いているわけでもないから、全て読み切ってしまうのがもったいなくて「ひょうひょう」も「伊藤潤二自選傑作集」も3分の1くらい読まずに残しておいたのだがついにこの間、思い出したかのように両方とも読み切ってしまったのだ。

背徳的なうつくしさ

 「ひょうひょう」はネルノダイスキの作品集。初め読んでみた時にはそこまで気に留めなかったのだが、作品中に出てくる家とか路地なんかがなんとも写実的で、路地脇に置かれた盆栽、ブロック塀の中の飾り穴、無造作に置かれたタイヤ等々、、構造物のチョイスも絶妙。廃墟や路地や看板が好きな自分にとって妙に引き寄せられる要素が満載だ。

 そういったなつかしさを漂わせる一方でメカニカルな構造物や生き物、場所、におい、全体的にポップさの中に少し湿った感じと翳りが練り込まれた世界観は病みつきになる。

 逆に主人公(?)のネコのような人物がとてもシンプルで簡略化された記号のような描き方をされているところもいい。感情移入しやすい対象人物がとても抽象的なのでどんな人が読んでも主人公(そもそも主人公なのかわからないが)のなかに入っていき易いのだろう。

 この短編集で一番好きなのは「へのへのもへ」と「日々雑感」かな(ひとつに絞れてない)

最新作も読みたい

 と、まぁなんやかんや小難しく分析して良さを書いてみたものの、はっきり言って今「ひょうひょう」を読み切って思うことはシンプルに

めっちゃいい!かわいい!すき!

 ということだ。(笑) 

 「ひょうひょう」は2年ほど前に、音楽的・芸術的センスが凄いとひそかに尊敬している先輩からススメてもらった漫画。ネルノダイスキさんに今更ながらハマってしまったので今年出版された最新作「いえめぐり」も読もうと思っている。 なんせ大島てる推薦やし!

ネルノダイスキ「ひょうひょう」
アタシ社 ¥ 1,430(税込)
https://kamitoatashi.fashionstore.jp/items/18310444

ネルノダイスキ「いえめぐり」
ビームコミックス ¥1,100(税込)
https://amzn.to/3fAQgee

 みなさんも是非!!

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