古代エジプト展 -天地創造の神話- 京セラ美術館へ②

6月に行った「古代エジプト展 -天地創造の神話-」のレポート第2弾。 今回は「死」に関する展示やステラ(石碑)やレリーフ、アマルナ美術などの個人的感想だ。

前回第1弾の記事はこちら↓

死や冥界に関するもの

 オシリスは冥界の神。 雰囲気作りなのかやたらと暗い照明だったので細部まではっきりと見えなかったのが少し残念だった。

時代は後50~100年くらい。ローマ帝国の属州になった頃だ。描かれているものはアヌビス神やホルスの目であったりと伝統的なものであるが

 ミイラマスク頭部側面に描かれていたこの人物の顔の雰囲気が、今までの古代エジプトの描写と異なる様な気がした。

 この時代の少し前にヘレニズム期というギリシア・ペルシア・メソポタミア・中央アジアに至るまで一つの世界として様々な文化が混ざり合う時代があったのだが、この顔の描写はまさにそれをあらわす証拠なんじゃないか。

 自分は音声ガイドをつけてないので、個人的に勝手な考察をしていたのだった。

 何となくテレビや写真で見たことあるようなものが、ホンモノとして次々に目の前に現れるので、心の中がずっとざわついていた。 これはミイラを入れる棺だ。

 棺の内側にはヒエログリフがびっしり。 外側にもヒエログリフとアヌビス神、足の裏側にまでヒエログリフ。 芸が細かいなエジプト人。 なぜか一瞬、耳なし芳一を思い出してしまった。

タレメチュエンバステトの「死者の書」
タレメチュエンバステトの「死者の書」

 今回一番圧倒されたのはこの「死者の書」かもしれない。 古代エジプトに興味がなくてもピラミッドとかツタンカーメンと同じで一度は聞いた事があるのではないだろうか。 死者の魂が肉体を離れ、死後の楽園に到着するまでの過程を記した書だ。

 上画像はほんの一部で実際はとても長々と書き記してあり、教室の黒板1枚半くらいの長さでずらっと展示されていたのだが、もちろん古代文字(これはヒエラティックかも)なんか読めないし、全部の絵をじっくり眺めてる時間もなかったので写真に収めるのがやっとであった。

 ミイラ化する際に取り除いた内臓を納める容器。 と説明書きにはあるが、これ1つ1つが手のひらサイズだった。胃とか腸とか肝臓とか入るんだろうか。。 それとも乾燥させて入れるのか。 ただ一つ間違いないことは、結構かわいい入れ物だということだ。

ステラやレリーフ

メンフィスのブタハ大司祭の墓出土のレリーフ

 右側に描かれているのが埋葬された人物だという。古代エジプト人は結構ちぢれ毛な髪質だったのかそれとも丁寧に編み込んでいたのか。

王の書記ホリのステラ

 王の書記であったホリが、王の使者として数多くの祭りが出来るよう神々に願ったことが書かれているらしい。

 それにしてもよく21世紀のこの時代まで色彩が残っているもんだと感心。そして少しでいいからヒエログリフを勉強して自力で読んでみたいと思った。

アマルナ美術

 エジプト新王国の首都はテーベであるが、一時期アケトアテン(テル・エル・アマルナ)に遷都した時代がある。それが第18王朝アメンホテプ4世(アクエンアテン)の治世だ。

アメンホテプ4世(アクエンアテン)の頭部を描いたレリーフの断片

 アメンホテプ4世は今までの多神教であるアメン・ラー信仰から太陽神アテンの一神教へと切り替える宗教改革を行う。彼の改革は宗教にとどまらず、絵画・建築・彫像・文学など伝統から解き放たれた様々な芸術の試行錯誤が見られた時代となった。 

 上画像のアメンホテプ4世は唇が分厚く、顔も長い。今までのファラオの容姿とは明らかに違っている。個人的にはでかいピアスのような耳たぶの穴(?)がとても気になる。

 この王妃又は王女の顔もとても人間らしい写実的なもの。 この感じを見ると、頭は別で作って後からくっつけられていた感じだろうか。 ミロのビーナス同様これはこのままの断片的な頭部の方がなんだか遺跡の出土品としてかっこいい、とか勝手な事を思ったりした。

改めて振り返って

 実際に足を運んでからもう1か月半くらい経過しているのだがそれにもかかわらず、あの日の不思議な体験というか感覚ははっきりと覚えている。 コロナの感染症対策が功を奏してかどうかはわからないが、そこそこ人が流れ込んでいたが、会場内は静かだった。 そして皆展示品に夢中だった。

 古代エジプト人のが願った使者の復活、それは思い通りに蘇ることはなかったが、しかし彼らの意図とは違ったかたちで、沢山の美術品や記録によって3000~5000年経った現代でも忘れられることなく現代人の記憶に生き続けているんだなと感じた。

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